当ガイドラインとWCAG 2.1の各達成基準のレベル
当ガイドラインは、WCAG 2.1の適合レベルAAを達成できる内容とすることを方針として策定しています。そのため、各ガイドライン項目は基本的にWCAG 2.1のレベルAとレベルAAの達成基準に基づいていますが、一部例外もあります。ガイドライン項目の検討に際して、レベルAAAのものも含めて、WCAG 2.1のすべての達成基準を検討しました。各達成基準に割り当てられているレベルについて、freeeのプロダクトの性質などを考慮して見直し、一部の達成基準についてはWCAG 2.1が示すものとは異なるレベルを前提とすることにしたためです。
ここでは、見直しの結果WCAG 2.1が示しているものとは異なるレベルを前提とすることになった達成基準の一覧と、レベルを見直した理由を示します。
レベルを見直した達成基準
達成基準 |
原文 |
日本語訳 |
見直し前 |
見直し後 |
---|---|---|---|---|
1.2.6 |
AAA |
AA |
||
1.3.4 |
AA |
A |
||
1.3.5 |
AA |
AAA |
||
1.4.3 |
AA |
A |
||
1.4.4 |
AA |
A |
||
1.4.6 |
AAA |
AA |
||
1.4.7 |
AAA |
AA |
||
1.4.9 |
AAA |
AA |
||
1.4.11 |
AA |
A |
||
1.4.12 |
AA |
A |
||
1.4.13 |
AA |
一部A |
||
2.1.3 |
AAA |
A |
||
2.2.3 |
AAA |
AA |
||
2.2.4 |
AAA |
AA |
||
2.2.5 |
AAA |
AA |
||
2.3.2 |
AAA |
A |
||
2.4.6 |
AA |
A |
||
2.4.7 |
AA |
A |
||
2.4.8 |
AAA |
AA |
||
2.4.10 |
AAA |
AA |
||
2.5.5 |
AAA |
AA |
||
3.2.3 |
AA |
A |
||
3.2.4 |
AA |
A |
||
4.1.3 |
AA |
A |
レベルを見直した理由
レベルを見直した多くの達成基準は、freeeのプロダクトにおいてより重要性が高いものであるという判断の下に、WCAG 2.1に示されているより高いレベルを前提とすることにしたものです。これとは異なる理由でレベルを見直した達成基準について、その理由を以下に示します。
達成基準1.2.6
音声情報を聴覚障害者にも利用できるようにするための手段として、字幕を付ける方法と手話通訳を付ける方法があります。聴覚障害者の中には、文字を用いたコミュニケーションがより得意な人と手話を用いたコミュニケーションがより得意な人がいます。(もちろん両方を同等に行える人もいます。)
文字情報と手話のどちらが有効化はユーザーによって異なるため、情報保障の観点からはどちらも同等に重要です。当ガイドラインではWCAG 2.1でレベルがAAAの達成基準は対象としない方針なので、WCAG 2.1が示すレベルのままでは、仮に可能でも手話通訳の提供が考慮されないという事態が発生することが考えられます。
本来は字幕同様、Aとして扱うことが望ましいものですが、実現するための難易度も考慮して、AAとすることにしました。
達成基準1.3.5
この達成基準では、ユーザーの入力を求めるフォーム・コントロールにおいて、入力が期待される情報の種類を明示することを求めています。この達成基準に関する解説Understanding Identify Input Purpose(日本語訳)では、autocomplete
属性の活用を具体的な方法として示しています。
autocomplete
属性が用いられているフォーム・コントロールは、常に決まった値を入力する場合、入力すべき項目が少ない場合などには、入力を容易にする効果が期待できます。しかし、そうではない場合には、誤入力を誘発することにつながります。
freeeのプロダクトにおいては、その性質上フォーム・コントロールが多数存在するページも少なくなく、また常に一定の値を入力するわけではない項目も多数存在します。したがって、ガイドラインが示す条件を満たすために安易にautocomplete
属性が用いられるようなことがあると、かえってユーザビリティーを損なう結果につながることが考えられます。
このようなことを考慮して、当ガイドラインではこの達成基準に対応する項目を設けないという判断に至りました。
達成基準1.4.13
この達成基準は、拡大表示を利用しているユーザーがマウスオーバー(ホバー)によって表示されるコンテンツを利用しやすくすることを意図しています。具体的には、ユーザーの意図に反してそのコンテンツが非表示にならないようにすることや、必要なタイミングでそのコンテンツを非表示にできるようにすることを目的としたものです。
このうち、ユーザーの意図に反してコンテンツが非表示になってしまうという現象は、場合によってはユーザーのコンテンツ利用を不可能にする可能性があるものだと考え、当ガイドラインではこの部分を取り出し、レベルA相当の項目として扱うことにしました。