freeeアクセシビリティー・ガイドラインについて

ガイドライン策定の背景

freee社内では、プロダクトのアクセシビリティー改善を目的とした取り組みが進められる中で、いくつかの参考情報が有志によってまとめられてきました。この文書は、これらの情報を1箇所に集約し、継続的に更新していくことで、開発の現場でより使いやすい資料を提供することを目的に策定されているものです。

Webアクセシビリティーに関するガイドラインとしては、2008年にW3C勧告となったWeb Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0が国際的に広く用いられています。さらにWCAG 2.0は、ISO/IEC 40500:2012として国際標準規格となり、その一致規格としてJIS X 8341-3:2016にもなっていて、日本国内においても参照されることが多いガイドラインになっています。

WCAGを社内で用いるガイドラインとして採用できるのがある種理想的な形ですが、これはあまり現実的な方法とは言えません。WCAGは、特定の技術に依存しない形で記述されているためです。こうすることで、今後Web上で用いられる技術がHTML、CSS、JavaScript以外のものに移行した場合にも適用できる内容になりますし、Web以外の媒体にも適用できるものになる可能性が高くなるという利点があります。しかし、結果として表現が抽象的になり、開発の現場においては理解しづらいものになってしまっているのも現状です。この問題を回避するために、開発の現場での使いやすさを意識し、WCAGの内容を踏襲した独自のガイドラインをまとめることになりました。

freeeアクセシビリティー・ガイドラインは、以下の方針で編集しています:

  • 抽象的で分かりづらい表現をなるべく廃し、HTML/CSS/JavaScriptを用いた開発およびiOSやAndroidのアプリケーション開発を意識した具体的な表現を用いる。

  • この文書で示すガイドライン項目を満たすことで、WCAG 2.1にレベルAAで適合した状態を実現できるようにする。

  • 画像、リンク、フォームなど、対象となるコンテンツの種類ごとにやるべきことが分かるように分類する。

  • freeeのプロダクトの性質などを考慮して、前提となるWCAG 2.1の達成基準のレベルを見直す。

  • 各ガイドライン項目を満たしているかどうかを確認する方法をなるべく明記する。

  • 理解を助けるための参考情報や事例を提示する。

なお、この文書で示している各ガイドライン項目は、2018年にW3C勧告となったWCAG 2.1に基づいて策定しています。WCAG 2.1は、WCAG 2.0策定後の状況の変化などを反映した項目追加などがされていますが、互換性を保った変更となっていますので、WCAG 2.1を満たすことでWCAG 2.0やJIS X 8341-3:2016を満たすことにもなります。

当ガイドラインの構成

この文書では、アクセシビリティーを担保するために必要な事項(ガイドライン項目)を、適用対象ごとのカテゴリーに分類しています。

各ガイドライン項目は、ガイドライン項目の本文に加えて以下の情報から構成されています。

対象プラットフォーム

そのガイドライン項目が対象としているものについて、以下のように示しています。

Web

デスクトップWebおよびモバイルのWeb(ブラウザーで表示されるものおよびWebビューで表示されるもの)

モバイル

モバイル・アプリケーション

意図

各ガイドライン項目が、どのようなユーザーのどのようなニーズを満たすものなのかを簡単に示しています。ガイドライン項目が解決しようとしている問題の本質を理解することで、そのガイドライン項目を満たしているかどうかのより正確な判断につながります。

対応するWCAG 2.1の達成基準

そのガイドライン項目がWCAG 2.1のどの達成基準に基づいているものなのかを示しています。そのガイドライン項目を満たすと、WCAG 2.1のどの達成基準を満たしたことになるのかを判断する参考情報として用いることができます。達成基準の番号、レベル、原文へのリンク、ウェブアクセシビリティ基盤委員会 (WAIC) による翻訳版へのリンクを掲載しています。

なお、WCAG 2.1の各達成基準と当ガイドラインの項目との対応に、WCAG 2.1の各達成基準に対応するガイドライン項目の一覧を示しています。

参考情報

必要に応じて、「意図」をより良く理解するための参考情報や、チェック方法に関する補足情報へのリンクを掲載している場合があります。

関連FAQ

よくある質問と回答(FAQ)に掲載されているFAQのうち、そのガイドライン項目に関連するものへのリンクを掲載しています。

チェック内容

そのガイドライン項目を満たしているかどうかを判断するために行うチェックの例を示しています。ここに示しているのはあくまでも例で、他により適切なチェック方法が存在する可能性もあります。

各チェック内容は、チェック内容本文に加えて以下の情報から構成されています。

チェックID

各チェック内容にはIDを割り当ててあります。すべてのチェックはアクセシビリティー・チェック全項目一覧にまとめてあり、「チェックID」からリンクしています。

対象

対象は、「チェック内容」の種類に応じて、以下のように分類しています。

デザイン

主に仕様を決める時点や設計段階で確認すべき項目

コード

マークアップやコーディングを確認しなければ判断が難しく、主に実装時に確認すべき項目

プロダクト

実際に操作してみたときの挙動で判断でき、主に実装後に確認する項目

対象プラットフォーム

ガイドライン項目同様、そのチェック内容の適用を想定しているものについて、以下のように示しています。

Web

デスクトップWebおよびモバイルのWeb(ブラウザーで表示されるものおよびWebビューで表示されるもの)

モバイル

モバイル・アプリケーション

なお、複数のガイドライン項目に対応しているチェック内容の場合、ガイドライン項目で示している「対象プラットフォーム」とそのチェック内容で示している「対象プラットフォーム」が一致していない場合があります。(例:ガイドライン項目の対象プラットフォームはWebのみで、対応するチェック内容の対象プラットフォームがWebとモバイルの場合)

重篤度

そのチェック内容を満たしていない場合の影響の大きさを示す、以下の4段階の指標です。

[CRITICAL]

操作不能になる人がいる

[MAJOR]

操作や情報取得が著しく難しくなる人がいる

[NORMAL]

不便を感じる人が少なからずいる

[MINOR]

問題はあるが影響は小さい

例示

対象が「コード」の場合、具体的な実装方法例を示している場合があります。

また、対象が「プロダクト」の場合、具体的なチェックの実施方法を示している場合があります。

WCAGの達成基準のレベルとチェック内容の重篤度

WCAG 2.1では、各達成基準にA、AAまたはAAAのいずれかのレベルが割り当てられています。WCAG本文では、レベルAが最低レベルでレベルAAAが最高レベルという記述はありますが、各レベルの明確な定義はありません。一般的には、レベルAは最低限満たすべき基準、レベルAAはより多くの人が利用できるようにするための基準、レベルAAAはより多くの人が利用できるようにするための基準の中でも特に厳しい基準という位置づけになっています。

また、どのレベルの達成基準を満たしているかによって、そのWebコンテンツのWCAGへの適合レベルが判断されます。例えば、当ガイドラインではWCAG 2.1の適合レベルAA相当の状態の実現を目標としていますが、これはレベルAの達成基準とレベルAAの達成基準のすべてを満たしている状態です。

一方、等ガイドラインの各ガイドライン項目はWCAG 2.1の達成基準に基づいています。ガイドライン策定当初にはこれらの達成基準に割り振られているレベルを参考に、各ガイドライン項目には[MUST]または[SHOULD]の2段階の優先度を割り当てていました。しかし、この優先度については以下のような理由でVer. 202309.1で廃止しました。

  • 1つのガイドライン項目に対して、重篤度が異なる複数のチェック内容が示されている場合があり、ガイドライン項目の優先度とチェック内容の重篤度の関係が分かりづらい。

  • 例えば優先度が[MUST]のガイドライン項目に示されているチェック内容の重篤度が[MINOR]の場合など、ガイドライン項目の優先度とチェック内容の重篤度の関係が分かりづらい。

  • 1つのガイドライン項目がWCAGのレベルが異なる複数の達成基準と関連付けられている場合があり、ガイドライン項目の優先度とWCAGの達成基準のレベルの関係が分かりづらい。

  • freee社内の運用の実態を見ると、ガイドライン項目よりもより具体的な状況について示しているチェック内容が参照されることが圧倒的に多く、結果としてチェック内容の重篤度がガイドライン項目の優先度よりも参考にされることが多い。

優先度は廃止しましたが、WCAG 2.1のレベルAA相当を目標にするという方針には変わりはなく、各ガイドライン項目は基本的にWCAG 2.1のレベルAおよびレベルAAの達成基準に基づいています。

なお、freeeのプロダクトの性質などを考慮して、一部WCAGに示されているものとは異なるレベルとして扱った達成基準があります。具体的には当ガイドラインとWCAG 2.1の各達成基準のレベルに示しています。

関連文書

この文書のステータス

この文書は、freee社内で進められる新規プロダクト開発、既存プロダクトの改善の際に用いるために策定されたものです。freee社外のWeb開発においても、参考にしていただける部分があるのではないかと考え、一般に公開しています。

この文書は、より理解しやすいものにすることを目指して、参考情報や例示の追加、表現の改善などを随時行います。

この文書の最新版は以下のURLで公開しています:

HTML版

https://a11y-guidelines.freee.co.jp/

GitHubリリース・ページ

https://github.com/freee/a11y-guidelines/releases/latest

この文書の改善のための提案は、GitHub上でお知らせください。

著作権と利用許諾条件

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス「freeeアクセシビリティー・ガイドライン」は、フリー株式会社が作成したもので、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 ライセンスで提供されています。

Copyright © 2020-2024, フリー株式会社

バージョン情報

この文書のバージョン:

Ver. 202411.0-CURRENT.20241205+5.1.0

ガイドライン・バージョン:

Ver. 202411.0-CURRENT.20241205

チェックシート・バージョン:

5.1.0

更新日:

2024年12月5日